時効制度
時効とは、ある出来事から一定の事実状態が一定期間継続したことで、もとの権利関係にかかわらず、現在の事実状態に適合するよう権利又は法律関係を変動させることをいいます。民事における取得時効と消滅時効、刑事における公訴時効があります。
第1項 取得時効
他人の物または財産を一定の期間継続して占有または準占有する者に、その権利を与える制度で、例えば、他人の土地に勝手に家を建てても、20年間住み続けると、時効が完成したことを主張して、もとは他人のものだった土地の所有権を取得できるということになります。
1.取得時効(しゅとくじこう)の要件
(1)20年の取得時効
①所有の意思をもって占有していること
②平穏かつ公然の占有
③他人の物を占有したこと
④20年間占有を継続したこと
以上の要件が揃うと法律上、自分の物であると主張できます。
(2)10年の取得時効
上記①②③の要件に加え、占有の開始時点に、善意かつ無過失であること、10年間占有を継続したことが要件になります。
なお、善意とは、自分のものであると信じていたこと、無過失とは、自分のものであると信じたことについて過失がないことです。
第2項 消滅時効
本来の権利者が一定の期間、権利を行使しない場合、権利を消滅させる制度です。時効期間は、債権では10年、それ以外の財産権(ただし所有権を除く。)は20年と定められています。
所有権は消滅時効にかからないことになっていますが、第三者が取得時効により権利を主張した場合は、所有権を失うことになります。
民法や商法その他の法律には、より短い期間で消滅時効が成立するものを規定しており、次のような例があります。
5年 の消滅時効
年金・恩給・扶助料・地代・利息・賃借料
商事債権
労働者の退職手当
3年 の消滅時効
医師・助産師・薬剤師の医療・助産・調剤に関する債権
技師・棟梁・請負人の工事に関する債権
不法行為に基づく損害賠償請求権
2年 の消滅時効
弁護士・弁護士法人・公証人の職務に関する債権
生産者・卸売または小売商人の売掛代金債権
居職人・製造人の仕事に関する債権
学芸・技能の教育者の教育・衣食・寄宿に関する債権
労働者の賃金(退職手当を除く)・災害補償その他の請求権
1年 の消滅時効
月又はこれより短い期間で定めた使用人の給料
労力者(大工・左官等)・演芸人の賃金ならびにその供給した物の代価
運送費
ホテルや旅館の宿泊料・キャバレーや料理店などの飲食料
6ヶ月 の消滅時効
約束手形・為替手形の裏書人から他の裏書人や振出人に対する遡求権または請求権
小切手所持人・裏書人の、他の裏書人・振出人その他の債務者に対する遡求権
ただし、これらの短期消滅時効にかかるものであっても、確定判決などの公的手続によって確定した場合は、確定したときからあらためて10年間の時効が進行することになります。
第3項 時効の中断
時効の中断とは、これまでの期間が0に戻ることを言います。中断事由が止むと改めて時効期間が0から進行することになります。
1.自然中断
自然中断は取得時効に特有のもので、占有者又は準占有者が任意にその占有を中止し、又は他人にこれを奪われたとき中断することを言います。
2.法定中断
民法に規定されている時効中断事由によって時効が中断する場合を法定中断といいます。これは取得時効、消滅時効のどちらにも適用されます。
(1)請求
請求書を送り続けていれば時効にはかからないと思っている人が多いようですが、単に請求書を送付するといった行為は、完全な中断の効力を生じません。時効中断のための請求とは、裁判上の請求になります。訴訟、支払催促、和解及び調停の申立て、破産手続参加等があり、一定の条件が課されている場合もあります。ただし、期間満了前の催告により、催告から6ヶ月間は時効期間が延長されます。
(2)差押、仮差押又は仮処分
差押・仮差押・仮処分を行うと、その原因となっている債権の消滅時効が中断することになります。またこの場合には、差押・仮差押・仮処分が行われている限り、新たに時効期間が進行することはありません。
(3)承認
債務を負っている人が自己の債務の存在を認めると中断します。支払いの猶予を求めたり、債務の一部を弁済した場合なども承認に該当します。しかし、口頭での承認は、後日、相手が否定することも十分考えられますから、書面を作成し保管しておくことをお勧めします。
第4項 時効の停止
時効の完成を猶予する制度で、次のような場合が規定されています。
①未成年者又は成年被後見人に後見人がいないときは、後見人が選任されて6ヶ月間は、時効は、完成しません。
②離婚による夫婦間の権利は離婚後、6ヶ月間は、時効は、完成しません。
③相続財産に対する債権は財産管理人が選任されて6ヶ月の間は、時効は、完成しません。
④時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断することができないときは、その障害が消滅した時から二週間を経過するまでの間は、時効は、完成しません。
第5項 時効の援用
時効期間が満了したとしても、当然に債務が消えたり、他人の物が自分の物になるわけではありません。
時効は当事者が援用しなければ、その効果を前提とした裁判をすることができないことになっており、相手方に対して援用することを伝える必要があります。また援用とは逆に、時効が完成した後で時効の利益を受けないという意思表示、つまり時効利益の放棄をすることも認められています。
では、時効期間が満了していて本当は返済義務が無くなっていたのに、これを知らないで時効を援用せず、債務を承認してしまった場合はどうなるでしょうか。この場合には、原則的には、もはや時効を援用することはできません。しかし、ケースによっては、時効の援用が認められる場合もありますから、専門家に相談することをお勧めします。
第6項 公訴時効
公訴時効とは、犯罪が行われ終わった時から一定の期間を過ぎると公訴が提起できなくなることをいいます。罪によって1年から30年と、犯罪の種類によって期間が定められています。しかし、人を死亡させた罪であつて死刑に当たる罪については公訴時効が廃止されたため、公訴時効が完成することはありません。

