コーヒーブレイク
「兎と亀」
このコーナーが始まって、もう1年が経過しました。
今回は、一休みと言うことで、・・・。
童話「兎と亀」、どうも亀が不当に評価されているようで納得がいかなかった。そこで、冗談半分ではあるが番外編を作ってみた。
昔々、ある朝、海岸で子供達が亀をいじめて遊んでいたが、お腹が空いたので亀を裏返しにしたまま家へ帰ってしまった。
そこへ兎が通りかかり、これは可哀想だと思って、重い亀を一生懸命に持ち上げて助けてあげた。
亀はお礼を言い、話しているうちにすっかり意気投合し、兎は跳び回って亀と遊んでいた。
あまりに夢中になって遊んでいたので、向こうから馬に乗って走ってくる侍に気が付かなかった。
そして、侍と馬も疲れていたので兎に気づかず、目の前まで来たところで馬が気づき、急に止まった。
油断していた侍は落馬してしまった。亀は驚いて首を引っ込めたが、兎は落馬した侍の格好がおかしくてつい笑ってしまった。
亀が恐る恐る顔を出してみると、侍は真っ赤な顔をして怒り、刀を抜いた。
兎は必死になって謝っているがもう遅い。
侍は許そうとしない、亀も一緒になって懸命に謝った。
侍はだいぶ興奮も冷めて許してもいいという気になっていたが、一旦抜いた刀を黙って引っ込めるのもバツが悪かったので、兎に言った。
「それなら、あの山の向こうの波止場まで競争してお前が勝ったら許してやろう。どの道を走ってもいいが、負けたら命はないものと思え。」
侍は、「兎が馬にかなうわけがない。競争の途中で逃げ出すだろう。」と思い、その機会を与えたつもりだった。
そうすれば自分の面子も立つ。
兎は自信がなかったが競争するしかなかった。
負けそうになったら途中で逃げようと思っていた。
突然、亀が言った。「私も競争に参加させてください。」
侍と兎は驚いて亀を見た。
兎は懸命に止めたが亀は譲ろうとしない。
亀の真剣な顔を見て、侍はしゃくにさわってきた。
「のろまのお前が参加するだと?ようし、万一、お前が勝ったら俺の命をくれてやる。しかし、俺が勝ったらどちらの命もないものと思え。」かくして競争が始まった。
兎は、すぐに走り出した。わき目もふらず走り出した。
せっかく、途中で逃げようと思っていたのに‥・。
亀も逃げてくれればいいが、亀は馬鹿正直できっと逃げたりしないだろう。
のろまの亀では勝負にならない。
もう、自分は逃げるわけにはいかない。自分が勝たなければ‥。
必死に懸命に山道を跳ね上がっていった。
侍にとっては自慢の駿馬、「負けるはずのない競争だ。それに二匹はどうせ逃げるだろうから、時間を与えてやらねば‥・。」
そう思い、鞍を付け直し、周りを見た。
兎が山の中腹を懸命に駆けていくのが見える。
亀は物陰にいるのか、それとももう逃げてしまったのか、どこにも見当たらない。
侍は二匹が逃げやすいように海岸線を走り出した。
亀は、スタートと同時に海に向かった。
早い海流が波止場に向かっている。
泳げば馬なんかに負けない自信があった。
おまけに侍はゆっくり鞍を直している。
亀はものすごいスピードで波止場へと向かっていた。
太陽が真上に来る頃、侍は波止場を目前にして驚いた。
自分の目を疑った。亀がゴールしている。
近づいていくと亀がにっこり笑った。
侍は覚悟を決めた。
「約束どおり俺の命をくれてやる。」そう育って刀を抜こうとする侍に亀が育った。「兎の命を助けてくださればそれでいいんです。」
侍と亀は、無事に勝負が終わり、ホッとしていた。
しかし、いくら待っても兎が現れない。
侍は言った。「きっと怖くなって逃げてしまったのさ。」
亀が答えた。「そんなことはない。兎は逃げたりしない。」
亀は、兎が来るはずの山道に向かってゆっくりと、それでも懸命に歩き始めた。
侍はしばらくそれを見ていたが、亀は一向に進まない。
見ているうちに眠くなってきて、うとうとし始めた。
兎は、懸命に走り続けた。しかし、途中で足を滑らせ、崖下へ落ちて絶命していた。
亀は一生懸命兎を探していた。
しかし、太陽は容赦なく、じりじりと亀の甲羅を照らしている。
懸命に歩いたが亀は力尽きた。
薄れゆく恵織の中で崖下に横たわる兎の姿を見つけた。
最後の力を振り絞ったとき、亀もまた崖下へと転がり落ちていった。
波止場で、侍はふっと我に返った。
既に日も暮れようとしている。「兎と亀はどうしただろうか。また砂浜で遊んでいるのかな。」そう思いながら帰り支度を始めた。
家に向かって歩き始めたが、どうにも気になる。
侍は引き返し、亀の足跡を辿った。
そのうち足跡がとぎれた。
崖下に日をやると、兎と亀が折り重なるように横たわっていた。
呆然と見つめていると雨が降り始めた。
しばらくして、侍は雨雲を仰いだ。
鞍をはずし、馬を放した。
崖を降り、穴を掘った。
雨はますます激しくなっていく。
ひとつの穴の中に兎と亀を埋め、跪き、両手を合わせた。
雨は滝のように降ってくる。
「約束だ。」そう言って、侍は腹を切った。
翌日、すっかり晴れ上がった山道を農夫が歩いていた。
馬が一頭崖を見下ろして佇んでいる。
つられていっしょに崖を見下ろして見ると、昨日の雨で土砂崩れがあったのか、崖下が埋まっていた。
農夫と馬は暖かい日差しの中、山道を下っていった。
お互いに信頼し合うこと、約束を守ることは、とても大切だと思います。
しかし、それでもトラブルや悲しい出来事は起こってしまいます。
「素直な気持ちで人と接することが出来れば・・・・。」と願います。

