生活保護
病気で働けなくなった。蓄えも底を尽いてしまった。家賃も滞納していて住む場所までなくなってしまう。頼れる親戚もいない。夫の暴力がひどく逃げ出したいが,小さな子供がいて働くこともできない。生活保護制度というのは,自分の努力だけではどうにもならない状況に陥り困窮してしまった場合の最後の頼みの綱であり,人として健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な生活を保障する制度です。制度を利用するには一定の基準や条件に合っている必要がありますが,とにかく生活に困窮している場合は,怖がらず,恥ずかしいと思わずに福祉事務所(市町村役場)で相談して下さい。ただし,窓口へ相談しても冷たくあしらわれるといったケ-スも報告されているようです。そのような場合は,専門家を通じて申請をするなどの対応をして下さい。
生活保護は次の原則に則って適用されるべきものとなっています。
第1項 無差別平等の原則(生活保護法第2条)
生活保護は,全ての国民に無差別平等に適用されることになっています。生活困窮に陥った理由や過去の生活歴等は問われず,法の下の平等によるものです。
第2項 補足性の原則(生活保護法第4条)
生活保護は,資産(預貯金・生命保険・不動産等),能力(稼働能力等)や,他の法律による援助や扶助などその他あらゆるものを生活に活用してもなお,最低生活の維持が不可能なものに対して適用されます。
第3項 申請保護の原則(生活保護法第7条)
生活保護は原則として要保護者の申請によって開始されます。申請する権利は,本人はもちろん,扶養義務者や同居の親族にも認められています。また,急病人等,要保護状態にありながらも申請が困難な人もいるため,急迫保護(職権保護)が可能な旨を規定しています。
第4項 世帯単位の原則(生活保護法第10条)
生活保護は世帯を単位として要否を判定され,基準に従って扶助の程度が決定されます。
第5項 生活保護の種類
生活保護は8種類の扶助からなっており,これらの扶助は,要保護者の年齢,性別,健康状態等その個人または世帯の生活状況の相違を考慮して,1つあるいは2つ以上の扶助が行われることになっています。
1.生活扶助(せいかつふじょ)
生活困窮者が,衣食,その他日常生活の需要を満たすための扶助で,飲食物費,光熱水費,移送費などが支給されます。
2.教育扶助(きょういくふじょ)
生活に困窮する家庭の児童が,義務教育を受けるのに必要な扶助で,必要な教育費の実態に応じて支給されます。
3.住宅扶助(じゅうたくふじょ)
生活困窮者が,家賃,地代等を支払う必要があるとき,及びその補修,その他住宅を維持する必要があるときに行われる扶助です。
4.医療扶助(いりょうふじょ)
生活困窮者が,けがや病気で医療を必要とするときに行われる扶助で,原則として現物支給(投薬,処理,手術,入院等の直接給付)により行われ,その治療内容は国民健康保険と同等とされています。
5.介護扶助(かいごふじょ)
要介護又は要支援と認定された生活困窮者に対して行われる給付で,原則として,生活保護法指定介護機関における現物支給により行われます。介護保険とほぼ同等の給付が保障されていますが,現在普及しつつあるユニット型特養,あるいは認知症対応型共同生活介護,特定施設入所者生活介護は利用料(住宅扶助として支給)の面から制限があります。
6.出産扶助(しゅっさんふじょ)
生活困窮者が出産をするときに行われる給付です。
7.生業扶助(せいぎょうふじょ)
生業に必要な資金,器具や資材を購入する費用,又は技能を修得するための費用,就労のための支度費用等が必要なときに行われる扶助です。
8.葬祭扶助(そうさいふじょ)
生活困窮者が葬祭を行う必要があるとき行われる給付です。
第6項 被保護者の権利と義務
生活保護費を受給できると認められた人を被保護者といい,被保護者は次のような権利を得,いくつかの義務を負うことになります。
- 不利益変更(ふりえきへんこう)の禁止 - 正当な理由がない限り,すでに決定された保護を不利益に変更されることはない。
- 公課禁止(こうかきんし) - 受給された保護金品を標準として租税やその他の公課を課せられることはない。
- 譲渡禁止(じょうときんし) - 保護を受ける権利は,他者に譲り渡すことができない。
- 生活上の義務 - 能力に応じて勤労にはげんだり支出の節約を図るなどして,生活の維持・向上に努めなければならない。
- 届出の義務 - 収入や支出など,生計の状況に変動があったとき,あるいは居住地または世帯構成に変更があったときは,速やかに届け出なければならない。
- 指示等に従う義務 - 保護の実施機関が,被保護者に対して生活の維持・向上その他保護の目的達成に必要な指導や指示を行った場合や,適切な理由により救護施設等への入所を促した場合は,これらに従わなければならない。
- 費用返還義務 - 緊急性を要するなど,本来生活費に使える資力があったにも拘わらず保護を受けた場合,その金品に相当する金額の範囲内において定められた金額を返還しなければならない。

